石灰(酸化カルシウム)は資源が豊富にあり,高融点で,酸素解離圧が低いなど耐火物としてのすぐれた性質をもっています.一方,空気中の水分や炭酸ガスを吸収しやすい(消化性)とか酸化鉄などが混入すると融点が低下(スラグ化)するため乾燥剤,精練用フラックスやセメント原料などに用いられてきましたが,るつぼや鋳型に使われることはほとんどありませんでした.しかし石灰るつぼや石灰鋳型をジャスト・イン・タイムに製作し,真空または不活性雰囲気での溶解鋳造に使えば消化性やスラグ化の問題は解決できるはずです.このような考えに基づいて実用化研究を長年続けた結果,次のような成果を得ることができました.
(1)石灰るつぼで真空溶解することによって不純物や非金属介在物の少ない鉄鋼材料が得られる.
(2)ア−ク炉や電子ビ−ム炉で溶解が困難な純クロムやクロム合金を溶解できる.
(3)融点が大幅に異なる銅−ニオブ合金,銅−バナジウム合金なども溶解できる.
(4)チタン,チタン合金の溶解が可能であり,石灰鋳型に鋳込むと鋳型反応層はほとんど生じない.写真はTi-15%V-3%Al-3%Cr-3%Sn合金の鋳肌近傍の顕微鏡組織で,反応層はジルコニア鋳型や黒鉛鋳型に鋳込んだ試料に生成するが,石灰鋳型に鋳込んだ場合には見られない.
写真 各種の鋳型に鋳造したTi-15%V-3%Al-3%Cr-3%Sn合金の鋳肌近傍の組織
(5)溶湯の流動性がよく,薄肉鋳物の製造に適する.